電気自動車(EV)普及における消費者行動とウェルビーイング

掲載日2026.02.05
最新研究

人文社会科学部 地域政策課程
朴 香丹
応用計量経済学、家計経済学、環境経済学

本研究は、日本の消費者を対象に、電気自動車(EV)の普及状況、車両タイプ間の乗り換え行動(ガソリン車?ハイブリッド車?電気自動車など)、およびEV利用が人々のウェルビーイングに与える影響を明らかにしたものです。全国47都道府県を対象とした大規模アンケート調査データを用い、環境意識、利他的行動、充電インフラ認知などがEV採用にどのように関係しているかを分析しました。その結果、EV所有者は従来型車両の所有者に比べて生活満足度やポジティブな感情が高い傾向にあることが示されました。本成果により、EV普及政策が温室効果ガス削減だけでなく、人々の幸福感向上にも寄与する可能性が示され、持続可能なモビリティ社会の実現に向けた政策設計への貢献が期待されます。

研究の背景と目的

炭素排出削減が求められる現代において、電気自動車(EV)は環境負荷の低減に向けた重要なモビリティの選択肢となっています。しかし、世界では依然として化石燃料車の利用率が高く、EVの普及は限定的です。本研究は、日本の消費者を対象に、EV採用に対する態度および行動の実態を明らかにするとともに、EV所有が人々の主観的幸福感(ウェルビーイング)にどのような影響を与えるかを総合的に検証することを目的としています。

研究内容

本研究では、2023年に実施した全国規模のインターネット調査データを基に、消費者の車両保有状況、将来の車両選択意向、環境意識、利他的行動、充電インフラの認識、主観的幸福感などの多面的な情報を収集しました。分析には計量経済学的手法を用い、(1)EV採用の決定要因、(2)既存車両(ガソリン車?ハイブリッド車)からの乗り換え行動の傾向、(3)EV所有とウェルビーイングとの関連性について統計的に検証しました。特に、現在保有する車両タイプが将来の選択に与える影響にも注目し、消費者の「選択の継続性」と「行動変容」の両面から検討しました。

分析結果

分析の結果、日本では依然として化石燃料車の利用が主流であり、消費者は現在の車両タイプを将来も選択する傾向が強いことが明らかになりました。一方で、一度EVを採用した消費者は、次回の車両購入においてもEVを選択する確率が高く、初回導入の重要性が示唆されました。また、環境問題への関心、利他的行動、充電インフラに対する肯定的な認識がEV採用を促進する要因であることが確認されました。加えて、EV所有者は非所有者と比較して生活満足度やポジティブな感情が高い傾向が見られるなど、EV所有がウェルビーイングに関連している可能性が示されました。

今後の展開

今後は、EVの長期的な利用が個人の行動?生活の質にどのような影響を与えるかを時間軸で明らかにする研究を進める予定です。また、都市部と地方部で異なる交通環境や充電インフラの整備状況が消費者行動に与える影響についても分析し、地域ごとの政策設計の示唆を得ることを目指します。さらに、EVだけでなく次世代モビリティ全般や持続可能な消費行動と幸福感の関係について、理論的?実証的な知見を深化させる研究を展開していく予定です。

【掲載論文】
題目:Electric Vehicle Adoption: Japanese Consumer Attitudes, Inter-Vehicle Transitions, and Effects on Well-Being

著者:Xiangdan Piao, Akiko Nasuda, Shenghua Li
誌名:Sustainability
公表日:2025年12月24日

本研究は、JSPS科研費(課題番号:23K17082)の助成を受けて実施された。また、本研究は東北大学「学際科学グローバル研究者育成プログラム(TI-FRIS)」の支援を受けている。さらに、本研究は高橋産業経済研究財団(助成番号:J220000023)の支援を受けている。

本件に関する問い合わせ先
人文社会科学部環境経済論研究室  
019-621-6758
piaoxd@iwate-u.ac.jp